◆◆マイクロチップについて◆◆


 ここ数年、「海外に犬や猫などのペットを連れてゆきたい」という飼い主の方から相談を受けることが多くなってきました。短期間の海外旅行に連れて行く、と言うケースもあれば、長期の海外出張という場合もあります。ヨーロッパの主な国やアジアの先進諸国、オーストラリアやニュージーランドなどの多くの国では、海外から入国する犬や猫その他の動物に対してマイクロチップの装着を義務付けています。行き先によってはマイクロチップが必要ないという場合もありますが、2004年11月から日本の検疫制度が改正され、海外から犬や猫その他の動物を日本へ入国させる際には、マイクロチップを装着していないと180日(6ヶ月間)の係留が必要となってしまいます。従って帰国することを考えれば現実的には装着しておくべき、と言う事になります。

△「マイクロチップ」ってなに?

 マイクロチップとは直径約2o、長さ約1cmの小さなICチップで、一つ一つに異なるID番号が付されています。マイクロチップを動物の体内に装着することで、このID番号が個体の識別番号となります。リーダーと言う機器を使ってこのID番号を読み取ることで、世界中どこに行ってもその動物が「どこの誰か」を特定することが可能になります。国によっては、全ての飼育犬に対してマイクロチップの装着を義務付けているところもあります。
 マイクロチップはちょっと太めの注射針のような器具で簡単に装着することが出来ます。犬や猫、フェレットなどの動物では、首の付け根~肩甲部の皮下に装着するのが普通です。麻酔は必要ありませんが、どうしても「痛そう、かわいそう」と言う場合には、避妊手術や去勢手術のときに同時に装着すると言うのもひとつの方法でしょう。


△マイクロチップを装着するための器具

 針の太い注射器のような器具で、マイクロチップを簡単に動物の皮下に埋め込むことができます。小型犬や猫などの場合には、必要に応じて局所麻酔を使用する場合もありますが、通常は麻酔は必要ありません。


△「マイクロチップ」の必要性

@海外に犬や猫などの動物を連れてゆきたい

 多くの国では現在、犬や猫その他の動物を他国から入国させる際にマイクロチップの装着を義務付けています。ヨーロッパのEU加盟国では、EUの国々を動物が自由に行き来できるように、「EUパスポート」と言う動物のパスポートを発行していますが、このEUパスポートを取得するためには、マイクロチップを装着してある必要があります。
 また日本の検疫でも、入国の際にマイクロチップを装着していない動物は180日(6ヶ月)の係留が必要となるため、検疫を最短時間で通過するためには「マイクロチップの装着」が必須ということになります(半年間検疫所に預けてもいい、という方は別ですが・・・?)。
 詳しくは《動物検疫のホームページ》参照

 

A 動物が迷子になったときのために

 様々な理由により、犬や猫たちが迷子になってしまうことは決して珍しいことではありません。散歩中や旅行中に犬や猫が行方不明になってしまうこともあります。窓から猫が「ヒョイッ」と飛び出して何日も帰ってこないこともあります。「動物には帰巣本能があるので大丈夫」などと思われる方もいるかもしれませんが、実際には自力で家に帰って来られる動物はほんの数%に過ぎません。実際には多くの犬や猫たちが、迷子になったまま、帰ってくることが出来ないという場合が殆どです。特に震災などの災害時には多くの動物達が置き去りになったり迷子になったりします。たとえ首輪や鑑札が付いていたとしても、放浪生活をしているうちに取れてしまう可能性もあります。こうなってしまうと、飼い主のもとに帰ってくる可能性は殆ど無くなってしまいます。しかしマイクロチップを装着していれば個体識別が出来るため、かなり高い確率で飼い主の所に戻すことが出来ます。

 

B 捨て犬・捨て猫を減らすことが出来る(かも知れない)

 現在、日本では全ての飼い犬・飼い猫に対してマイクロチップの装着を義務付けている訳ではありません。従って、マイクロチップを装着していないから「捨て犬or捨て猫だ」と判断するわけにはいきません。現段階では、犬や猫を簡単に捨ててしまおうと考える「無責任」な人たちが、わざわざマイクロチップを装着しようと考える可能性は極めて低いため、今のままでは「捨て犬・捨て猫を減らす」と言う事には直接結び付かないかもしれません。しかし自治体によっては、特に猫に対してマイクロチップ装着を推進している地域もあります。猫は「飼い猫」でも野外で自由に生活している場合が多く、「野良猫」との区別が付かないため、きちんと飼い主を特定できる状態にすることで「飼い主」としての自覚を持ってもらい、「飼い猫」としてきちんと管理してもらうための「意識の向上」にも役立つと考えられます。
 また沖縄では、捨てられて野生化した「野良猫」が天然記念物のヤンバルクイナを襲って問題になったため、猫の対するマイクロチップの装着を義務化して「捨て猫」を減らそうという取り組みをしている地区もあります。 こうした地道な行動が全国的にも広まれば、「野良犬・野良猫」として処分されてしまう動物達を減らすことにも繋がると考えられます。

 

C 動物の盗難の防止・解決

 悲しいことですが、ペットの犬や猫を「盗まれた」と言う話は、時々耳にします。一体何を目的にその様な酷いことをするのか、憤りを覚えるばかりですが、このような場合でも「マイクロチップ」を装着しておくことで、盗難にあった動物を取り戻すことが出来る可能性が高くなります。またマイクロチップを装着する飼い主が増えて、チップを装着することが一般的になってくれば、他人の飼っている動物を「盗む」という犯罪自体が減少する可能性は非常に高いでしょう。そのためには、「動物の飼い主」の間でマイクロチップが普及するのと同時に、「動物を飼っていない人たち」に対しても「マイクロチップの存在」を知ってもらう必要があるのかもしれません。



※上の図は「ライフチップバイオサーモ」の販売元であるDSファーマアニマルヘルス社のウェブサイトから拝借した画像です。現在当院では「ライフチップバイオサーモ」の取り扱いを休止しておりますが、マイクロチップの大きさや形、構造などはメーカーによりそれほど大きな違いはなく、またこの図はマイクロチップのイメージを理解するのに便利なので、引き続き掲載させて頂きます。


△マイクロチップの装着法

 一般にマイクロチップの装着に「毛刈りも麻酔も必要ない」と書かれていますが、当院では基本的に「局所麻酔」の使用をお勧めしております。上のイラストでも分かるように、マイクロチップ自体の直径が約2mmあります。注射針の内部にこれが入っていると言うことは、かなり太い針を皮膚にさすということになる訳です。特に猫や中型犬以下の犬、あるいは大型犬でも痛みに敏感な犬などでは、事前に局所麻酔で痛みを麻痺させておいてからチップを挿入する方が良いと考えています。
 局所麻酔は、インスリン注射用の非常に細い針を使って注射しますので、これによる痛みは殆どありません。
 チップ挿入部の毛を刈る必要があるかどうかに関してですが、基本的には刈らなくても大丈夫ではあります。しかしながら、比較的太い針を刺しますので、「傷の様子をよく観察できる」「万が一チップが抜けて脱落(この可能性は殆ど無いと言われてますが)した場合でも見つけやすい」などの理由から、出来れば挿入部周囲の毛を刈ることをお勧めします。毛を刈る範囲は約1cm四方で充分ですので、外見的には殆ど目立たない程度で済みます。


 

 日本ではまだまだ「マイクロチップ」の認知度は地域によってかなりの差があり、一般的に普及しているとは言えない状況です。しかし海外ではかなり一般的になっている地域もあり、今後日本でも徐々に普及してくるものと思われます。いざと言うときに「マイクロチップさえ付けていれば・・・」などと後で悔やむことの無いように、マイクロチップの装着について検討してみても良いのではないでしょうか?

 当院では原則的に、「ライフチップ」(アメリカのデストロン社製:日本代理店は大日本住友製薬(株))と言うマイクロチップを取り扱っていますが、ご希望に応じてAVID社製などのマイクロチップも取り寄せ可能です。
 「ライフチップ」は、リーダーでIDを読み取ると同時に体温を測定することが可能です(右の写真はリーダーでマイクロチップのIDをを読み取っているところです)。

 2011年9月末より当院では米国デストロン社製の「ライフチップ」および「ライフチップバイオサーモ」の使用を中止しております(使用中止の理由はDSファーマアニマルヘルス社のウェブサイトより「マイクロチップについて」のところをお読みください)。現在、当院で取り扱っているマイクロチップは米国AVID社製の「AVIDマイクロチップII」および、スイスDATAMARS社製の「アイディール」というマイクロチップです。
リーダー(読み取り器)はデストロン社製のものがそのまま問題なく使用できますので、当院ではこれを使用しております。

 注)ハワイへ動物を連れてゆく場合は、アジアやヨーロッパなどで一般的に流通しているISO規格のマイクロチップ以外のAVID社製チップの装着を義務付けていますので、注意して下さい。詳しくはハワイの検疫所に直接お尋ねください。

 最近、ハワイでもISO規格のマイクロチップを受け入れているようなので、日本国内で流通しているマイクロチップを装着しても問題ないようです。しかしハワイではAVID社製のリーダーを持っている動物病院が多いようなので、AVIDのチップを装着して行く方が良いかも知れません。

 


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