◆◆術前の注意について◆◆


▽術前検査の必要性

 手術をするためには、全身麻酔をかけなければなりません。全身麻酔の安全性は、獣医麻酔学の発達と共に年々向上しています。しかし、腎臓や肝臓、あるいは心臓などに問題があると、全身麻酔により様々な障害が発生する危険性が高くなります。
 手術の前に血液検査などの検査を受けることにより、隠れた異常を見つけることが可能になります。つまり、術前検査を行うことにより、麻酔による事故の危険性を回避することができます。通常は、術前検査として「一般血液検査」が必要になります。若くて健康な動物の場合(例えば不妊手術や歯石除去などの術前検査の場合)と、高齢の動物や何らかの病気の症状を伴うような場合では、同じ「血液検査」でも検査項目に違いが生じます。リスクが高いと思われる動物の場合は、より多くの項目を検査する必要があります。

 術前の身体検査で何らかの異常が見られた場合や、血液検査で異常な項目が判明した場合には、結果に応じて追加の検査が必要になることもあります。例えば、聴診で心臓に雑音が聴取された場合には、心臓の検査(レントゲン・エコー)が必要になりますし、あるいは血液検査の結果、「肝臓の数値」に異常が見られた場合には、肝臓の超音波検査や(必要に応じて)血液凝固系の検査なども必要になる場合があります。

 猫の場合にはFIV(猫エイズ)やFeLV(猫白血病ウイルス)、FIP(猫伝染性腹膜炎)などのウイルス感染が、麻酔の事故の発生と関連しているという意見もあります。これらのウイルスは発症せずに「潜伏感染」していることが多く、麻酔をかけて手術をすることで発症する可能性もあります。これらのウイルス検査は、通常の術前検査には含まれていませんが、リスクが高いと思われる場合や特にご要望がある場合には実施することが出来ますので、お申し出ください。

 いずれの検査も、麻酔や手術を安全に行うために必要な検査です。しかしながら、これらの検査を行うことで「隠れている全ての異常を検出」出来るという訳ではありません。幾ら検査をしても術前には検出困難な病気もありますし、術前には「必要性が低い」と思われる全ての動物に対して超音波やレントゲンの検査を実施するのは実際的ではなく、「無駄な検査を沢山してしまう」という「過剰診療」に繋がることもあります。しかしだからと言って「術前検査が無駄」という事では、決してありません。リスクを「ゼロ」にすることは不可能でも、できるだけ少なくする努力は、惜しむべきでは無いと考えます。


▽手術前日・および当日の注意

 以前は麻酔前には12時間の絶食が必要であると言われていたため、前日の夜から食餌を抜くことが常識となっていました。しかし最近では、麻酔をかける6時間前からの絶食で充分であると言うことが分かってきたため、当院では手術前6時間の絶食を推奨しております。通常の手術はお昼の時間帯に行うことが多いため、朝6時頃までに食餌を終えることが出来れば、朝食を与えても構いません。どうしても早朝に食事を与えることが出来ない場合には、前夜の夕食を少し遅めに与えるようにしてください。お水は特に制限する必要はありません。

 消化管の手術を行う場合や、消化器系の症状が見られる場合には、術前の食餌に関しては個別に注意事項を説明しますので、獣医師の指示を良く守ってください。


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