■■キシリトール続報■■


 

 以前「中毒…」のところでも触れたことのある「キシリトールの毒性」の話ですが、アメリカの獣医専門雑誌「Veterinary Medicine」の2006年12月号に「犬に対するキシリトールの影響に関する新情報」が掲載されましたので、重要な点だけを抜粋して紹介したいと思います。


「キシリトール」について

・ キシリトールはヨーロッパ(特にフィンランド、ノルウェイ、ロシア)および日本で一般的な甘味料であり、アメリカでもこの数年でその使用が急激に増加している。
・ キシリトールの摂取は、人では比較的安全性が高いと考えられるが、犬では、摂取により時に命に関わるような重篤な症状を引き起こすことがある。
・ キシリトールの投与が、犬で低血糖を引き起こすことは約40年前から知られていた。しかし最近の研究で、キシリトールの摂取が急性の肝壊死を引き起こすことが判った。

 

「キシリトールの歴史など」

・ キシリトールは1891年に、ドイツの化学者であるEmil Fisherにより発見された。
・ キシリトールは、イチゴ類やレタス、きのこ類など普通の食物にも含まれている。
・ キシリトールはサッカロース(ショ糖)と同じくらい甘みがあり、カロリーは約2/3である。
・ 人ではインスリンの分泌を殆ど刺激しないため、低炭水化物食を要する人達や、食品中のグリセミック・インデックスが気になる人達のための代用品として優れていると考えられている。
・ キシリトールは特定の細菌の増殖を防ぐことが知られており、子供の細菌性内耳炎の予防に使用されている。また、口腔内の細菌が酸を作り出して歯の表面にダメージを与えるのを抑制することで、虫歯予防の目的でも使用される。このため、無糖ガムや歯磨き粉、その他の口腔ケア製品に多く含まれるようになってきた。

 

「キシリトールの代謝」

・経口投与されたキシリトールの吸収性は、動物種によって大きく異なる。ヒトとラットでは、ゆっくりと吸収される(だからこそ糖アルコールの過剰摂取により浸透圧性下痢のリスクが高くなる)。ヒトでは口から摂取したキシリトールの49〜95%が吸収される。
・ 一方、犬では口から摂取したキシリトールは、急速に、ほぼ完全に吸収される。血漿中の濃度のピークは摂取後約30分である。

 

「キシリトールの毒性と症状」

・ 多くの動物種において、キシリトールの経口摂取における安全域は広い。マウスにおける経口摂取でのLD50は20g/kg以上である。
・ ヒトでは、キシリトールを1日あたり130g以上摂取すると下痢を起こすと言われているが、それ以外の異常は見られない。しかし、これは犬では全く異なる

●最初に見つかった副作用

・ 1960年代の実験。犬にキシリトールを静脈投与した場合に、同量のグルコースを投与した場合よりも多くのインスリン分泌を引き起こし、同時に血糖値の低下をも引き起こすことが判った。
・ ある研究では、犬に体重1kgあたり1gのキシリトールを経口投与した場合の血中インスリン濃度のピークは、同量のグルコースを投与したときの約6倍であった。
・ グルコースの投与後は血糖値が上昇するのに対し、キシリトールの投与後は急速に血糖値が低下し、約1時間で50mg/dl以下にまで低下した。
・ APCCは、犬で体重1kgあたり0.1g以上のキシリトールを摂取した場合には低血糖を生じる危険性がある、としている。
・ キシリトール摂取後に通常最初に見られる症状は「嘔吐」である。低血糖は通常30〜60分以内に見られるが、キシリトール・ガムを摂取した症例では低血糖の症状発現までの時間が12時間まで延長したものもある(ASPCA APCC Database 2003-2006)。症状は次第に嗜眠、運動失調、虚脱、痙攣発作へと進行する。
・ キシリトールの血糖値に対する影響は動物種によって異なる。ヒト、ラット、馬およびアカゲザルでは、キシリトールを静脈投与しても血中インスリンは殆ど〜全く上昇せず、血糖値にも影響がない。これに対して、牛、山羊、ウサギ、ヒヒではキシリトールの静脈投与により多量のインスリンが分泌される。猫、フェレットではよく解っていない。

●「新たに判明した副作用」

・ 最近、ASPCA APCCはキシリトール摂取後12〜24時間以内に肝酵素の活性が上昇した犬の事例を幾つか報告した。これらの犬の中には、キシリトール摂取の後、急性肝不全を引き起こしたものもいた。
・ 「警告文;犬にこれらのお菓子を与えないで!」参照;これら8頭のうち6頭では、肝不全の発症前に低血糖が見られなかった。しかし、嗜眠や嘔吐は9〜72時間以内に見られている。
・ これらの犬ではまた凝固不全による血液凝固時間の延長、点状出血、斑状出血、消化管内出血が見られた。
・ 血液化学検査ではALT値の上昇、軽度〜中程度の高ビリルビン血症、凝固時間の重度な延長などが見られた。また軽度〜中程度の血小板減少症やALP値の軽度の上昇、中程度の低血糖が見られた。
・ また、軽度〜中程度の高リン血症が見られた。「高リン血症」は予後不良の指標である
・ 8頭のうち5頭で安楽死、もしくは死亡が認められた。うち3頭で病理解剖が行われた;2頭で重篤な肝壊死が認められた。
・ 現時点では、犬で肝不全を引き起こすキシリトールの容量は、低く見積もっても0.5g/kgとされている(ASPCA APCC Database: Published data,2003-2006)。しかし現時点で、この反応が容量依存性のものなのか、特異体質によるものかと言うことは、はっきりしていない。

 

「キシリトール以外の甘味料について」

・ ソルビトールやマンニトールなどの糖アルコールは、犬に対して血糖値やインスリンの分泌に殆ど(あるいは全く)影響を与えないが、過剰摂取により浸透圧性の下痢を起こす可能性はある。
・ ショ糖やアスパルテーム、スクラロースなどの人口甘味料は一般的に安全であり、もしも大量に摂取したとしても特に疾患を引き起こすことはない、と言われている。

 

「治療」

・ (省略)


(2007年1月22日)
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