■■「動物用シャンプーに対する疑問」−その2


 

春先から夏場にかけては、やはり皮膚病が多発する傾向にあります。犬や猫は汗をかきませんから、高温・多湿という条件がどれだけ皮膚病の発生頻度上昇に関与しているのかは定かではありませんが、蚤やダニなどの寄生虫も繁殖しますし、植物の花粉によるアレルギーの発生など幾つかの要素が重なることが原因ではないかと思われます。
 皮膚病の治療法の中に、シャンプー療法という方法があります。シャンプー療法は「皮膚病の原因」を除去する治療法ではありませんが、皮膚を清潔にしたり、過剰な皮脂や角質を除去したり、あるいは被毛と角質に保湿効果をもたらしたりすることで、皮膚を良好な状態に保つことを目的としています。

 もちろん症状にあわせて適切なシャンプーを適切な頻度で使用することはそれなりに効果があるのですが、薬用シャンプーの場合、使用法を間違えると却って悪化する可能性もあります。最近では一般のペット用品店でも「薬用シャンプー」が売られています。中には比較的強い脱脂作用や角質溶解作用を持つシャンプーなども見かけることがあるので、とても心配になることがあります。
 それから最近非常に気になるのは、「殺菌シャンプー」の乱用です。特に「クロルヘキシジン」という消毒剤の入ったシャンプーは一般にも売られているようですし、動物病院でも非常に多用されています。中には、皮膚に何も問題が無いのに、通常使用するシャンプーとして、この「クロルヘキシジン・シャンプー」を使用しているケースもあります。

 クロルヘキシジン・シャンプーは本来、細菌性皮膚炎(膿皮症)などの治療に使用されます。全身の皮膚に炎症を起こして敏感になっているような動物に対し、消毒剤入りの洗剤で「洗う」ということが、本当に適切な治療法なのだろうか?と言う疑問は残りますが、ここでもっと問題にしたいのは、「健康な皮膚の動物に対して日常的なシャンプーとしてクロルヘキシジンを使用している」と言うケースです。これは明らかに間違った使用法です。皮膚には常在菌がいる、と言うことは多くの方がご存知だと思いますが、これら常在菌は、皮膚を健康な状態に保つ働きをしていることが知られています。日常的に消毒剤で体を洗い、これら常在菌を減らすということは、決して皮膚に対して「良いこと」であるとは考えられません。

 また、細菌の消毒剤に対する「耐性」は、抗生物質に対する「耐性」ほど一般的ではありませんが、それでも幾つかの報告があります。当然クロルヘキシジンに対しても「耐性菌」が見つかっており、このまま「不必要な使用」を続ければ、今後耐性菌が増え続ける可能性も否定はできません。クロルヘキシジンと言う消毒剤は、手術前の皮膚の消毒などに頻繁に使用されているのですが、「不必要」に日常的にクロルヘキシジン・シャンプーで体を洗っているような動物で、いざ手術が必要な状況になった場合、「消毒してもあまり効かない」とか、「日常的な消毒剤の使用により皮膚の常在菌叢のバランスが崩れている」などという理由により「感染」のリスクが高い、と言うデータが出てきても不思議ではありません。

 実際には、このようなデータを見たことはありませんし、本当にこれが正しいかどうかは、残念ながら今の時点では判りません。しかし少なくとも、皮膚の健康な動物に対し日常的なシャンプーとして「消毒剤入りシャンプー」を使い続けるのは「不必要」である、ということは言えると思います。


 

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