■■中毒〜こんな意外なものが危険?!(その2)■■


以下の文章は、「ペット倶楽部」という月間フリーペーパーに執筆したものです。
 クリスマス、お正月と楽しいイベントが続く時期です。この時期は人間の方も食べ過ぎ・飲み過ぎで体調を崩すことがありますが、動物達も決して例外ではありません。浮かれてしまったり気が緩んでしまったりするせいか、ついつい普段は与えないような「ご馳走」をたくさん与えてしまうことがよくあります。クリスマスケーキを「ほんの一口」と言いつつ二口、三口と与えてしまったり、お節料理のおすそ分けをしてしまったり…。もちろん大事に至らないケースもありますが、時にはお腹を壊して下痢や嘔吐・食欲不振などを引き起こしてしまう場合もあります。そんなときに限って病院がお正月休み…などと言うことにならないように、あまりいつもと変わったものを与えるのは控えるようにしてください。
 「前編」では、私たち人間が「安全」だと思って日常的に摂取している「食べ物」や「飲み物」が、動物では時として危険なことがある、と言うことを紹介しましたが、今回もその続きです。

 人間にとっては安全な食物でありながら、犬や猫などの動物に与えてはならないものの代表としては、「タマネギ」が有名です。タマネギはAllium(ネギ属)に含まれますが、その他にもガーリック、長ネギ、ラッキョウ、韮(ニラ)、チャイブ(西洋浅葱)などがAllium属に含まれます。アメリカの獣医学専門誌に掲載されたある報告(.pdf)によると、タマネギだけではなく全てのAllium属の植物が、犬や猫たちにとって同様に危険である、とされています。タマネギその他のAllium属には数種類の「有機チオ硫酸化合物」と言う酸化物質が含まれており、これを摂取することによって赤血球の細胞膜が損傷を受け、溶血性貧血を引き起こします。重度の貧血では急性腎不全などを併発して死亡することもあるので充分注意する必要があります。この物質は加熱調理しても変化しないため、すき焼きやカレーライスなど過熱したものでも中毒を起こします。またよくある勘違いとして、「タマネギだけ除ければ大丈夫だろう」と考えて、一緒に調理した肉や他の野菜などを与えてしまい、中毒になることもあります。同じ皿で調理されたものは全て、与えるべきではありません。

 アボカドが兎やげっ歯類、鳥類に対して毒性が高いと言うのは比較的知られているのではないかと思いますが、同様に犬や猫、フェレットなどに対しても毒性を示すことがある、と言う報告があります。アメリカのASPCA Animal Poison Control Center(動物の中毒管理センター)によれば、アボカドの果実、種、葉などにはペルジン(persin)と呼ばれる中毒物質が含まれており、人に対しては毒性を示すことは無いようですが、犬や猫がこれを摂取することで嘔吐や下痢などの消化器症状を引き起こす可能性がある、と言うことです。鳥やげっ歯類ではさらに感受性が高く、呼吸困難や全身性のうっ血を引き起こして死亡してしまうこともあります。従って、人以外の動物にアボカドを与えるのはやめたほうが良いでしょう。

 キシリトールはキシリットともいわれ、俗に「ショ糖やグルコースと比べて虫歯になりにくい」、「低カロリーで血糖値上昇抑制効果を持つ」などといわれている甘味料の一種です。ヒトでの有効性については、「虫歯の原因になりにくい」、「歯を丈夫で健康にする食品」として、キシリトールを関与成分とした特定保健用食品が許可されています。一般に「健康によい」と言うイメージを持つキシリトールですが、ASPCA Animal Poison Control Centerの報告によれば、犬が誤って比較的大量に摂取した場合には、急激な低血糖を起こして意識レベルの低下や痙攣などの神経症状を引き起こし、重度な場合には命に関わる可能性もある、とのことで、キシリトールを含んだガムやキャンディーなどを犬が届かないところに保管するように注意を喚起しています。実際にはキシリトールを含んだ犬用のガムなども売られていますが、必要以上に大量に与えるのは「安全」とは言えない可能性もあります。因みにヒトの場合でも、キシリトールを一度に30~40g摂取すると、下痢などの消化器症状や腹痛などを起こすことが知られています。

 一般食品ではありませんが、ビタミン剤やサプリメントなども注意が必要です。これらはどこの家庭でもよく見かけるものですし、「健康によいだろう」と考えて、犬や猫などの動物に日常的に与えているケースも多いのではないかと思われます。ビタミンB群やビタミンCなどの「水溶性ビタミン」は過剰に摂取しても尿から排泄されてしまうため、それ程気にする必要はありません(但しビタミンCの過剰症では膀胱のシュウ酸結石が見られることがあります)。しかしビタミンA、D、Kなどの「脂溶性ビタミン」は体内に蓄積してしまうため、多量に摂取すると過剰症を引き起こして様々な障害をもたらす可能性があります。特にDを含むビタミン剤とカルシウム剤を同時に大量に摂取した場合、重度の高カルシウム血症を引き起こして命に関わるケースもあります。実際には、バランスの取れた適正なフードをきちんと与えていれば、一般的にビタミンやサプリメントを添加する必要は基本的にはないはずです。病気の治療のためにある種のビタミン剤などを服用している場合には、不用意にサプリメントを与えると危険な場合もありますので、内容成分をよく確認し、同時に与えても大丈夫かどうか、掛かりつけの動物病院でよく相談されることをお勧めします。
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